警視正は彼女の心を逮捕する

 ……その日の夜、私は定時に職場を出た。

 息せききって、鷹士さんのお宅近くのスーパーに駆け込む。
 今日のお礼をしなくちゃ。

「せめて、彼の大好きなおかずを作りたい」

 まだ、鷹士さんと暮らすようになって一週間たらず。
 彼はどんなおかずが好きだった?
 一生懸命思い出そうとする。

 三日目はアジの干物を焼いたのと、お新香と、豆腐の味噌汁。
 副菜は、ポテトサラダ。

 四日目は鷹士さんが作ってくれた、ジャンバラヤとヨーグルトサラダと、具沢山のスープ。

 昨日は泣きながら眠ってしまって食べなかった。
 朝はまだ、一緒に食べれていない。

 家の中では互いに好きなことをしている。
 でも、私はゆったりとした気持ちで過ごせる。

 落ち着いた雰囲気に油断していると、ちょいちょい色気たっぷりな視線を寄越される。
 ……鷹士さんのことを、それしか知らない。

「早く、彼のことをもっと知らなくちゃ!」

 妙に焦る。

「鷹士さんは私のことをたくさん知ってくれているのに……!」