『ヒナ、愚息がバカなことをしないようにお目付け役を頼むよ。それと、フジとサナが寂しがるから、マメに連絡してやりなさい』

 おじ様の言うことはもっともだから、私はお父さんやお母さんにメールをしょっちゅうしていた。
 二人からゆう君のことも訊かれるから、答えていたけれど。
 ……知らず、お目付け役を果たしていた? 

 どくんどくんと、心臓が嫌な音を立てる。

『ヒナちゃん。この子、家事まるっきりできないから、よろしくね』

 おば様の笑顔。
 家事全般はお母さんに仕込まれていたし、ゆう君のお世話したくて張り切っていた。
 ね? 
 おじ様はともかく、おば様は私のことを、ゆう君のお嫁さん候補だと思ってくれている! 
 必死に希望を見出そうとして……ちょっと待って。
 もしかしたら、おば様の中で私は『未来の娘』ではなく、お手伝いさんポジションだったの? 

 私がショックを受けているのに、ゆう君は気づいてくれず、どんどん話を進めていく。

「日菜とは当たり前だけど、肉体関係はない」

 彼の言葉が痛い。

 確かに私は、ゆう君とはキスはおろか、ハグや手をつないだこともない。
 もちろん、肌を重ねたことも。
 結婚まで、そういうことをしないのだとばかり……。

「日菜。どうした、具合悪い?」

 聞かれて、うんと頷こうとして。
 ふいに、ゆう君から『日菜乃』と呼ばれたことがないことに気づく。
 宗方の家では、両親だけではなく宗方の家で働いている人達を名前からとった、二つの音で呼ぶ。
 私も二文字。

 頭の中がガンガンしてきた。