「そろそろかなと思っていたら。タイミングよく父の後援会から、とある女性を紹介されてね」

 嘘。
 叫びたいのに、声にならない。

「彼女の実家には政治家として後押ししてもらえるし。悪くない家柄の()なんだ」

 たしかに私は、ゆう君ちの運転手とお手伝いさんとの娘で。
 でも『運転手(フジ)お手伝い(サナ)と日菜は僕の家族みたい』って、ゆう君が言ってくれたのに!
 ……家族みたい(・・・・・・)

「それで新居に、日菜を連れて行きたいと彼女に伝えたら『お手伝いさんは、新婚の間は要らない』と断られたんだ。確かに、そうだよな」

 私がお手伝いって、どういうこと? 
 必死に、同居する前の会話を思いだそうとする。
 ……一年前の三月。
 私がイタリアでの修行を終えて、実家に等しい宗方の家へ帰ってきたときのことだ。

『悠真、ヒナは東京の会社に入るそうだ。お前、一緒に暮らしてやりなさい』

 ほら。おじ様は、私をゆう君の恋人として認めてくれていたはず。
 ……でも、なぜか不安になる。
 もっと思い出していく。
 あ。
 私は目を見開いた。