問い詰めようと考えていたのに、鷹士さんが挑発するような表情になった。

「それより日菜乃ちゃんは焦ったほうがいい」
「なにを?」

 私が首を傾げると。

「出張続きだったから、この家にはろくに食料がない」

 ……確かに。
 さっき冷蔵庫の中を覗いたら、冷凍食品は結構あったけど。
 あとはコーヒー豆と牛乳、ココアだけだった。

「今日は俺が作るけど、明日は日菜乃ちゃんの当番だからね。買いだしに行かないと、材料がないぞ?」
「当番まで決まってるの?」

 あっけに取られる。

「個々の部屋掃除、および洗濯は各自。共有部分は二人一緒の時にやっつけよう」

 言われたことが珍しい内容だったので、目をしばたたいた。

「どうした?」
「……悠真さんと暮らしていたときは、私が全部していたから」

 小さな声で言うと、鷹士さんは眉をひそめた。

「あいつ、なにもやらなかったのか」

 悠真さんと一緒に暮らしていたときは、家事全般は私がしていた。
 仕事が溜まっていて始発で職場に行き、終電で帰るときも。体調の悪い時も。

「でも、それは! 家賃分というよりも。私が悠真さんから褒められたくて、していただけで!」