「この家なら、安く済むよ?」

 鷹士さんはニッと笑った。

「……どういうことですか」
「家事は半分こにしよう。日菜乃ちゃんには相応の家賃を入れてもらう。これなら、君の心理的負担は少ないはずだ」

 出させてくれるんだ。
 じんわりと嬉しくなる。

 悠真さんはいくら言っても受け取ってくれなかった。

「どう?」
「たしかに」

 促されて、用心深く返事をした。
 鷹士さんが、にっこり笑う。

「その間に引越し費用を蓄えたり、候補の場所を見に行ったりすればいい」

 魅力的な案だった。でも。

「私にばかり有利です。鷹士さんに利点があるとは思えないのですが」
「メリットはあるよ」

 興味が湧いた。

「どんな?」

 聞いてみたら、極上の笑みを向けられた。

「今は内緒」

 ……ソーデスカ。
 艶かしさと、いたずらっ子を表情に合わせ持つ男の人になんて、かないっこない。