「座って」

 ぽんぽんとソファの隣を示された。
 遠慮なく、腰掛ける。

 彼がアップルティーを淹れておいてくれた。
 優しさにじんとしながら、落ち着くために一口頂く。
 ティーカップを置いてから、ゆう君に向き直る。

「……話したいことって……、なに?」 

 心臓が甘く、とくんとくんと鳴る。
 ゆう君は私の大好きな笑顔を向けてくれた。

「結婚しようと思っている。僕も政治家を目指す者として、そろそろ足場固めをするときだからね」

 ああ、やっぱり。
 私の予感は正しかったんだ。
 彼を見つめる私の目は、きっとキラキラしている。

「外務省に辞表を提出してきた。次の衆議院選に立候補するつもりだ」

 うんうん。深く、頷く。
 問われる前から『YES』と言おうと口を開きかけ。

「僕は『妻』と新居で暮らすから、日菜はこの家にいていいからね」

 ゆう君の衝撃の一言で固まった。

「……はい?」

 目がまん丸くなった自覚がある。