私は専門学校時代の仲間から送ってもらったPDF部分を夢中で読んだ。

 ……未処理の研究書類の中から探しだしてくれたという。
 青井宗佑さんの手紙を購入した同じ時期に、蒐集家のコレクションを寄贈されたらしい。
 コレクション内容が貴重かつ状態が最悪だったので、学芸員と修復士どちらの手も塞がれていたのだと。


 宗佑さんは知人への手紙に書き残していた。

『俺の唯一の作品【群青】には、塗りつぶしてしまったが俺のサインが入っている。群青が世に出ることがあれば、それが本物かどうか確認して欲しい。そして、出来れば名前を戻して欲しい』と。

 私はほうっと息を吐き出した。

「これで、美術館に真贋を調べてもらえる」

 ただ、今の段階では私の一存で美術館に連絡をとることは出来ない。

「贋作について、日本の警察が捜査しているかもしれない」

 悔しいことに綾華さん情報では、夫である鷹士さんの部署が携わっている可能性があるらしい。

 ……そして、宗方のおじ様も。
 悠真さんはわからないけれど。
 でも。
 おじ様が関わっていらしたら、悠真さんの政治家人生もただでは済まないだろう。

「それにお父さんや、お母さんも」

 ゾクリとした。
 二人は、宗方家をクビになってしまうかもしれない。