……午前零時を回った頃。
 榊宅に捜査員が訪問。
 徳治本人はいなかったが、妻に令状を見せて任意同行。
 のち、ギャラリー榊に待機していた捜査員が突入し、地下にあった多数の美術品を押収した。

 鑑定の結果、榊が今まで売却した美術品の本物であったことが判明する。

 贋作を本物と偽り売買したことを受けて、榊徳治に緊急逮捕令状が発出されたが、行方不明。
 共犯と思われる娘の綾華、及び共謀したと見られる運転手は、失踪しているのが発覚した。

 刑事部長は、被疑者を取り逃した捜査本部の失態に怒り狂う。

「エリートの化けの皮が剥がれたな! 貴様は降格だ! ……いや、貴様がマル被に情報をリークしたんだろうっ」

 自分よりはるかに若い、捜査二課課長を悪し様に罵る部長の顔は、喜悦に歪んでいる。
 捜査員が部長に冷たい視線を向けていると、公安の課員が現れた。

「賀陽鷹士を逮捕しろ!」

 声高に呼ばわった刑事部長の腕を公安課員が掴んだ。

「な、なんだ?」

 怯えた刑事部長に、公安課員が無表情なまま声を放つ。

「あなたには、被疑者榊徳治に捜査情報を漏洩した疑いがかかっています」

 鷹士は刑事部長の関与を疑っていた。
 公安課に上申したうえで部長を内偵していたのだ。

「俺は知らん! 濡れ衣だっ」

 刑事部長は喚きながら、会議室から連れだされた。