ハッと気がつく。

「これは宗方家への背信行為かもしれない……」

 おじ様は、美術品が好きな私に見方や修復方法を教えてくれた。

「鷹士さんが、おじ様は私を宗方コレクションの管理者にするつもりだったのかも、って言っていたっけ……」

 本当だったら、多分今の職を辞している。
 それだけ、宗方の家にあった美術品達は私の根幹の部分。

「なのに、おじ様のことを裏切るの?」

 けれど、レプリカと銘打った作品ならともかく。
 美術館で本物を見ていると信じている人達を騙したままではいられない。
 
「おじ様、ごめんなさい」

 どうか、私の思い違いでありますように。 

 宗佑さんが手紙を送っていた「知人」を調べることにし。
 ……数年前、「知人」が亡くなったことを知る。
 宗佑さんの故郷である県の、地方紙の片隅に小さく載っていた。
 親族は「知人」の遺言通りに宗佑さんとの書簡を競売に出したと。

「どこが買ったの」

 多分、シリーズを所蔵している、どこかの美術館が購入しているはず。
 数時間後、見つけた。

「あった……!」

 幸運にも、専門学校時代の仲間が就職していた美術館に月さんの作品とともに購入されていた。

 思わずガッツポーズをした私は、仲間にメッセージを送る。
 時計を見れば、もう真夜中に近い。
 
「でも、まだ起きているはず」
 
 祈るような気持ちで送信した。