私は目を見開いた。

「塗り潰したのなら、X線を照射すれば宗佑さんのサインが浮かび上がるかも?」

 でも、真贋を判定するためとはいえ。
 それだけでは美術館へメールを送ることは出来ない。
 宗佑さんのサインがなければ『じゃあ、本物はどこにあるの?』という話になってしまう。

「それに」

 サインがあったとしても(・・・・・・・・・・・)本物の証明とはならない(・・・・・・・・・・・)

 贋作者がそこまで精巧に模倣している可能性もあるし。
 なにより、おじ様の言葉を裏付ける文書がなければ。

「『青井宗佑手記』に、そんなこと書いてあったかな……?」

 パソコンに展開されている、PDF画像を丹念に読んでいく。

 彼は月さんの闘病生活が始まってから日記を書き始めたらしい。
 妻への愛情、刻々と悪化していく症状への嘆き。
 病身を押して創作活動を行う月さんへの想い。
 なにより彼女の作画を手伝うことによって、自身も美術への関心が高まったこと。

「ない」

 あったら、それなりに有名な画家にまつわる資料だ、ニュースになっていたはず。