ほっとした傍から『本当に?』と、疑念が湧いてしまう。

「国会議員の所得って見れるんじゃなかったっけ? ……あ」

 毎年夏に公開されていて、衆・参両院の資産報告書閲覧室で確認することが出来るらしい。
 明日、行って調べる?
 でも、一刻も早く知りたい。

「……記録って、二十年も前のものが残っているのかな」

 公式文書の保管期間って何年だったっけ。
 調べようとして、手が止まる。

「閲覧許可を申請すると、私が調べているのがわかっちゃうよね」
 
 議員とはいえ、人のお財布を調べるのだ。
 こちら側が匿名は許されない気がする。
 ……なんとなくだけど。
 鷹士さん以外の人に、私が調べていることを知られてはいけない気がする。

「『宗方龍仁代議士』の所得記録、ネットに落ちていないかな」
 往生際悪く、ネットの海を検索すること数十分。

「あ」

 あった。
 二十年前に、【群青】を売却とある。
 私が初めてあの絵を見たのは六歳の頃。
 今、私は二十六歳。
 おじ様は私に見せてくれたあと、すぐに売ったのだろう。

「画廊の買取価格も妥当だな……」

 さらに作品を追うと、わかってはいたけど『青い作品を展示する』がコンセプトのあの美術館に買われたと。
 時系列からは不自然さは見当たらない。

 よかった、おじ様は悪くない。
 安心してから、猛烈に反省する。

「私、本当に酷い人だ」

 よくしてくれた人を疑うなんて。