泣きそうになったので、指を折って数えてみる。

「……とりあえず、わかっている事実」

 一、鷹士さんは私より先に休暇明けした。

 二、私が出勤した日に綾華さんが訪れた。

 三、彼女によると鷹士さんは。
『今ね、彼は美術品の贋作詐欺事件を追っているのよ』

 ……綾華さんは自信たっぷりに言っていたけど。

 時系列的には。
 捜査本部がハネムーンの前から設置されていたら、鷹士さんが旅行に行けるはずがない。

 だとすると私の発言をもとに、鷹士さんが設置した?
 違う。
 いくらなんでも、根拠にするには浅すぎる。
 
「もしかしたら……、贋作に綾華さん()携わっていたりする……?」

 鷹士さん達が綾華さんを見張っていたら、私と接触しちゃったから。
 彼は家に帰れなくなった、とか。
 
「綾華さんは、宗方のおじ様の義理の娘で」
 
 幼い頃から宗方家に出入りしていた鷹士さんも、おじ様と親しいと見做されてしまう?

「まさか。鷹士さんまで疑われて、監禁されているんじゃ……!」

 彼が牢屋に入れられているシーンが、脳内シアターに上映された。
 ざああと音がする勢いで、血の気がひいていく。

「藤崎、いえ賀陽様。なにかおっしゃいましたか?」

 運転手さんがなにか言っているけれど、答えられる気力がない。
 上半身を支えていられなくて、ずるずるとシートにもたれかかってしまう。

「だから出張すると言ったまま、音信不通になってしまったの?」

 私が心配するといけないから。
 きっとそうだ。
 だって、彼は私のためなら平気で嘘をつく。
 
 かすかすになってしまったエネルギーメーターが充填されていく感覚。

「助けなきゃ」

 私の愛する旦那様を。