「そうだ、アップルティーがあるんだ」

 保温ポットから高級そうなカップに注いでくれて、私の前に出してくれた。

 ……クラスで行われたクリスマスパーティで、交換プレゼントとして私に回ってきたもの。
 ティーバッグを飲んでいたら、悠真さんは私の大好物だと信じたらしい。
 一緒に住んでいた頃は、悠真さんが私に淹れてくれるから、特別な飲み物だった。

 今は鷹士さんが出してくれるホットチョコレートのほうが何倍も好き。
 ……なんでホットチョコレートなんだろう?

「日菜、少し痩せたかな?」

 むしろ、鷹士さんと暮らしてから太りましたけど。
 彼が、私の大好きなものや幸せになるものばかりを与えてくれるから。

 ……ただ、鷹士さんが『出張』に行ってからは眠りが浅い。
 私は眠れないと、すぐ頭痛や吐き気を催してしまう。
 この一週間、体重計には載っていないけれど、もしかしたら痩せたかもしれない。

 探るような目を向けられる。

「……色々、聴取されているんだろう?」
「まるで私が犯罪者みたいな言い方ですね」

 むっとして言えば、違うよとなだめられた。

「日菜も知っているけれど、鷹士は芸術オンチだ。だから彼は苦手分野を克服すべく、日菜と結婚したんだよ」

 やっぱり、そうだったんだ。
 ぐらりと世界が揺れた気がして、私は一瞬目をつぶった。
 ……深呼吸したあと、おそるおそる目を開ける。
 でも、室内はなにも変わらず。

 悠真さんもニコニコしている。