……いつまで経っても『冗談だよ』と鷹士さんは戻ってこない。
 私は諦めて寝ることにした。

 でも、変な時間に眠ってしまったせいか、妙に目が冴えている。
 まんじりとも出来ない。
 ベッドの中で天井を見ながら、呟いてしまう。

「鷹士さんが私を? 信じられない……」

 一八〇センチは超えていて、合気道の達人。
 スタイル抜群の彼は学生時代、悠真さんに『一緒に読モをしよう』と誘われていたらしい。
 わかる。
 鷹士さんは、黒髪黒目のキリリとした、和風のイケメン。
 今日のスリーピースのスーツもかっこいいけれど、絶対に和服も似合う。

「……その、鷹士さんが?」

 出世街道をフルスピードで走っている彼が? 
 おまけに性格は静かで真面目。
 お嫁さんになりたい女性が行列を作っているに違いない、鷹士さんが。

「そんなの、嘘」

 ……私なんか、住み込みのお手伝いにしか思ってもらえない女なのに。