「……おそらく警察内部に密通者がいる」

 鷹士の双眸が冷たい輝きを取り戻した。

「まずは証拠保全だ」

 黒幕が通信会社に横槍を入れないとも限らない。

 日菜乃からのメッセージをスクリーンショットで保存すると、捜査チームの共同アカウントへ送信した。
 これで車内の会話が解析されれば、彼女の疑惑は薄くなる。 

 ……しかし。

「日菜乃」

 鷹士は小さく呟く。
 彼の双眸は物思わしげな光を湛えていた。

「これは、罰か」

 日菜乃から悠真へ、ひいては宗方龍仁へ情報が漏れるのを憂い、彼女に注意喚起を怠ったことへの。

 警察官としての正義を遵守して、愛している女性を窮地に立たせてしまった。

 日菜乃から自分宛てのメッセージで、今回の関与への疑いは薄れるだろう。
 しかし、彼女の傷を白日に晒すことになってしまった。
 鷹士の表情が苦痛に歪む。

「すまない……! 君を守ると誓ったのに!」

 一瞬のち、激情を押さえ込む。
 
「だが、このままにはさせない」