賀陽鷹士警視正が指揮を執る捜査二課は、詐欺・汚職・企業犯罪・選挙違反などの犯罪に対応する部署である。

 悠真の妻、綾華は美術品贋作グループに深く関与している、と警察は睨んでいた。

「綾華も、捜査二課にマークされているのを察知している」

 奇妙な発言の裏には、事件の黒幕からの指示があるのかもしれない。

「クソ忌々しい愛人契約云々はともかく、捜査内容を知っているのが証拠だ」

 主犯は綾華の父、榊徳治(さかき とくじ)であろうと。 

 悠真の父、宗方龍仁(りゅうじん)は選挙資金を得るため、所蔵の芸術品を売り出している。
 榊はその売買を一手に引き受けていた。彼は画廊のオーナーであり、悠真の父親で代議士である龍仁の後援会会長である。

 榊が龍仁から任された絵画の贋作を作らせて販売しているのではないかと、以前から噂されている。

 最近の贋作事件で、元を糺せば榊の画廊ひいては宗方コレクションに行き着くのだ。
 しかし、贋作と判明するまでに多岐な人々の手を渡っており、どこですり替えられたかはわからない。

 知る人ぞ知る、宗方コレクション。

「宗方龍仁は政治家とは別に、美術品のコレクターとして密かに有名だ」

 彼一人が、というよりは代々の宗方家が、であるが。