日菜乃からのメッセージが届いている。
 荒ぶった気持ちが和むのを感じた。

 が、彼女からのメッセージを読み進めていくうち、己の顔が剣呑な表情になるのを自覚していく。

 日菜乃の両親を使って、彼女を脅迫したこと。
 そして愛する彼女が親友の愛人扱いされたことに。

 悠真の妻への怒りが膨れ上がる。
 同時に、日菜乃をそんな立場において誤解されるように仕向けた、悠真を憎悪した。

 冷静になろうと深呼吸を繰り返す。

「夫に愛人を許す妻……」

 考えられるのは、正妻であるという自信からの歪んだ寛容さ。
 あるいは。

「自分が愛人を持っているから、夫にも奨励している?」

 だとしたら愛人も、共謀しているかもしれない。

 悠真の妻・綾華については内偵が進められていた。

 女子大卒業後は、父の画廊を手伝っている。
 海外の客も多いから外国語も堪能だ。
 捜査員から知能の高い女性との報告を受けていた。

 綾華の交友関係は女子大時代の友人のみ。
 画像には、日菜乃の隣には運転している男も映っていた。

「運転手を洗い直すか」