『……すまない、日菜乃に窮屈な思いをさせる』
 きっと警察の人は皆、こうして律しているんだろう。
 私が鷹士さんの弱みになってはいけない。

 メッセージは既読にならなかった。
 私は一秒でも早く二人の家に戻るため、最後の気力を振り絞る。

 へとへとになって玄関を開けると、家の中がしん……としている。

「鷹士さん?」

 まだ帰っていない?
 携帯を確認する。

【急遽七日間の出張になった】とのメッセージが。

「……そうなんだ……」

 返事じゃなかったので、落ち込む。
 彼からの送信時間からして、同じ時間あたりなんだけど。

「私のメッセージ、読んでない?」

 確認するまでもなかった。

「既読になってない」

 そっか。
 忙しいもんね。

「……でも、今日だけは傍にいてほしかったな」

 百歩譲って、綾華さんの言動に一緒に怒り、愚痴を聞いてほしかった。

「っう」

 とうとう涙が溢れた。
 鷹士さんに抱きしめてもらいながら『愛してるよ』って言ってほしい……!
 ないものねだりで、自分がわがままだとわかっている。
 けれど、止まらない。

『どうして、賀陽鷹士があなたと結婚したか』

 綾華さんの言葉が私を殴ってきた。