カツカツカツ。
 我ながら、足音が荒いが構っていられない。

「なんなの、あのひと!」

 なんて勝手な言い草だろう。
 同居を言い出したのは宗方のおじ様で、私を振って別の女性と結婚したのは悠真さんなのに! 

 必死で忘れようとしてきたのに。
 いまさら、どうして関わってくるの。

 綾華さんの言葉が蘇る。
 言葉のあまりの汚さに、胸に痛みを感じた。

『使用人』より酷い。
 ……世間では家族でない男女が同居すると、そんな風に見られるのかと実感してしまった。

 あるいは私は、悠真さんが本当に付き合っていた女性がバレないための、隠れ蓑だったのかもしれない。

「悠真さんにすれば、発覚しても『同居人』とか『使用人』って言い訳するつもりだったの?」

『政治家を志す前に変な女に捕まらないように』

 ……お父さんの言葉がゾンビのように襲ってくる。
 あの言葉には、綾華さんが言っていたような意味が含まれていた?
 だから、両親もおじ様の言いつけに反対してくれたの。