警視正は彼女の心を逮捕する

「……わかりました」

 仕方なく、ついて行く。

 運転手が出てきた。
 どきりとする。
 お父さん?
 ……違う人だった。

 後部座席のドアを開けてくれた。
 綾華さんのあとに続いて乗り込もうとしたら、運転手さんに静止された。

「使用人は助手席だ」
 
 嫌な言い方だけど、彼の立場からすれば私はそうなのだろう。
 文句を言っても仕方ないので、助手席へ移動した。

 ドアを開けると、座面には包みが置いてあった。
 長方形で厚さ三センチほど。
 チョコレートとか入っている箱のようにも思える。

 どうすればいいのだろうと二人を見ても無言。
 鷹士さんから『ダッシュボードというんだよ』と教えてもらった、フロントガラスの前の部分にその包みを置く。
 重い。

 私が乗り込んでシートベルトをすれば、車は滑るように動き出した。

「率直に言うわ、困っているの」

 綾華さんが切り出した。
 え。
 ……なにを、だろう。

「夫のお世話が滞っているのよ」

 多分、私の顔は『きょとん』という表情のはず。
 頭の中は、はてなマークでいっぱいだ。
 綾華さんが申し訳なさそうな声を出す。

「夫も悪かったわよね。お小遣いもあげてなかったんですって?」 

 は?
 理解していない私を置いてきぼりにして、綾華さんは話を進めていく。