今度、気がついたのは。

「……ん……」

 どこかで、師匠がいつも歌うアリアが聞こえる。

 朝だ。……と頭の片隅で思うのに、眠くて仕方ない。
 おまけに体が壮絶にだるい、さっきよりもずっと。
 二、三度チャレンジして、起き上がるのを諦めた。

 ……いいか。今日くらい起きなくても。

 寝かせられているシーツも、羽織っているシャツも、さっぱりとして気持ちがいい。
 私がうとうとと微睡んでいると、歌声が近づいてくる。

 アリアが止まり、ノックの音が聴こえたが、私は答えられない。

「日菜乃? 飯にしよう」

 鷹士さんが上機嫌でアリアを鼻歌で歌いながら、部屋に入ってくる。
 その姿に目を瞠った。

「はっ、はだっかっ!」

 彼は上半身ヌードで下半身にスウェットパンツを履いただけ!
 色っぽい。
 セクシー。
 美しい。
 それに、えっち!

 あわあわしていると、鷹士さんがなにを騒いでいるんだ、みたいな流し目を寄越す。

「もっといやらしい姿。昨日、お互いにたくさん見ただろ」
 
「わ、私は見てないしっ」

 どうしよう、体を隠すものがない。
 だるい腕を動かし、私は掛布を体に巻きつける。
 慌てて起きようと思ったけれど、体に力が入らない。

「無理させたからな」 

 枕をベッドボードに立て、体を起こさせてもらう。

 折りたたみ式のテーブルをベッドに置かれた。
 美味しそうな匂いに、なんとか目を開ける。
 テーブルの上には、バーチ・ディ・ダーマとエッグフロレンティーン、そしてホットチョコレート。

「俺に寄りかかっておいで」

 鷹士さんもベッドに入ってきたので、彼の体にもたれかけさせてもらう。

「熱いから、気をつけて」

 私は彼に給餌してもらう。
 ここで恥ずかしがるべきなんだけど、頭の半分は寝ていた。

 そして私は彼の宣言とおり、本当に土日の二日間をベッドの上で過ごしたのだった。