……ちょっと待って。
 誰と一緒に寝ているの。
 どうして、『誰』かを鷹士さんだと認識しているの。
 しかも、二人とも裸っぽくない?

「もっとも意識あるなら、抱くけど」

 麗しいバリトンヴォイスに意識が浮上する。
 思い出した!

 私!
 昨日、もう一度求愛されて、OKして。
 だ、抱かれ……っ。

 クックク……と、体がなにかの振動を受けて、震える。

「なにを百面相しているんだ?」

 おそるおそる、彼の腕の中から顔だけ出してみた。

「おはよ」

 色気ましましの鷹士さんと目が合う。

「……お、はよござい、マス……」

 じっと見つめられて目を逸らす。
 が。

「想いが通じあったのに、見てくれないとか。意地悪すぎないか」

 冗談と切なさが混じったような声に、おそるおそる視線を戻す。

 すると、彼の顔が近づいているところだった。
 来る。
 でも避けられない。
 ううん、受け入れたい。
 結果、私は目を開けたまま鷹士さんと唇を合わせてしまった。

「男の人も唇柔らかいんだ……」

 呟いてしまったら、そうだよという瞳で見つめられる。
『そんなことも知らないの』という副音声が聞こえたのは、恋愛偏差値の低い人間の僻みだろうか。

「え、だって。鷹士さんがファーストキスだもの。知るわけないでしょ?」