「んん」

 寝返りをうった途端、目に光が当たった。

「まぶじい」

 呟いた自分の声がしゃがれている。
 口を開けて寝ていたかもしれない、喉がガラガラだ。

 そして、まぶたを閉じていても光がねじ込んでくる。
 でも腕を動かすのもだるくて、なんとかそのまま寝ようと試みた。

 九割くらいは睡眠の中の脳は、勝手に思考の海を彷徨う。
 なんだっけ、『然のつく熟語』で……。

「炯然」
 
 そこだけ、やけにはっきり聞こえた。

「ケイゼン? どんな意味だ?」

 鷹士さんにも届いたらしく、質問された。

「光り輝ぐざまどが……、明るいざま」
「ようは眩しいんだな?」

 うん。
 頷いたか自覚はなかったけれど、くるりと寝返りさせられた。
 腕を温かいモノに巻きつけさせられる。

 ん?
 なんで私、鷹士さんの声が聞こえることを不思議に思わないんだろう。

「まだ早い。眠るといい」

 髪や背中を撫でられた。

 んん?
 なんで彼の手が私の裸の背中に直接触れているの。

 ペタペタと手を前に出してみた。
 なにか彫刻に触れている?
 違うのは石膏の感触ではなく温かく、とくとくと脈うっていること。

「こら」

 ぎゅ、と抱き寄せられる。

 あれ。胸も、鷹士さんの胸に触れている。
 もぞり。
 しかも私の脚ったら、鷹士さんの脚に絡まってたりしている?