どの部屋か、私にはわからない。
 ただ体に受けた反発で、ベッドのスプリングにベッドに放り出されたのを知った。

「ネクタイ、外し方覚えているか?」

 高校はネクタイだったから、なんとか。
 頷きながら手を伸ばす。
 でも震えてしまって、うまく解けない。

他人(ひと)のなんて、外したことない……」

 勝手が違って、泣きそうになる。
 鷹士さんは私が困っているのをわかってくれたらしく、私の手が彼の手に包まれた。

「キスしてて」

 言われるまま、彼の頭を抱えて口づける。
 彼がなにやら手を動かしているのがわかる。

 とん、と軽く押されて私はベッドに仰向けに倒された。
 鷹士さんが私に馬乗りになって、腕時計を外している。

 いつの間にか、彼の上着とネクタイとワイシャツはなくなっていた。
 ボトムのベルトも緩められ、くつろげられている。

 なかに着ているアンダーのTシャツから鎖骨が見える。
 ピッタリしたTシャツを分厚い胸筋が盛り上げている。

 ……夜空のように艶かしくて、煌めいているこの人が、本当に私の恋人なの?

「日菜乃のえっち」

 軽い調子で言われる。
 凝視しているのがバレていたらしく、恥ずかしい。

「ごめ」

 謝るまえに唇を舐められた。