鷹士さんはニコニコしている。
 食事が運ばれてきた。
 お腹も空いていたし、美味しいのでいちいち感動してしまう。
 邪魔にならない程度に会話を楽しんだ。
 デセールとティ・オレを楽しむ。

「美味しかった! 美術館併設のレストラン、初めて入りました」
「だと思った。日菜乃なら、“食“より“データ“だよね」

 バレてる。

「美術館併設のレストランって、わりとセレブなお値段なんだもの」

 美術品は、一生使っても鑑賞し終わらないくらいある。
 そして私は、同じ展示を見るために何度も足を運ぶ派。

 どこの美術館に、なにがどんな工夫をされての展示だったか。
 現在の保存状態を確認したり、あるいはガラス越しや柵越しにでもわかる、修復歴を探したり。
 今後どんな風に劣化していくのか予想したり。
 そのとき、私達はどういう処置を求められるのかを考えたり。
 
 数十年に一度しか訪れない海外作品の企画も見逃せないけれど、収蔵品も常設しているわけではない。
 同じ作品であっても、数年前の状態と現在は異なっているかもしれない。

 全ての作品を網羅しきれないのはわかっている。
 けれど、修復の腕を磨くには、作品自体をまめに観に行くしかない。
 目録も大事な資料のうちだけど、やはり見れるものなら実物を確認しておきたい。