けれど、あからさまな口説き文句は私の気分を上昇させていく。
 まるで自分が地味子から、イケメンを翻弄する小悪魔美女になったみたい。

 鷹士さんのイケヴォに聞き惚れているあいだも、周囲を巻き込む無差別攻撃は、続いている。

「高いウエストも。ヒールを履いているツンと持ち上がったふくらはぎ」

 ……人が違えば、ハラスメントなのかもしれない。
 でも。
 鷹士さんから男目線で、女として見られていることを嬉しく思ってしまう。

「美術を語る日菜乃のキラキラした瞳や濡れた唇に、俺はそそられているんだ。……って、いい加減認識して?」

 目の前の男性の雄みにクラクラしてきた。
 再び臨界点を超えてしまった。
 目の前の男性にのぼせてしまい、私の足からガクンと力が抜ける。

「おっと」

 声とともに浮遊感。
 お姫様抱っこされている!

「あまり騒がさせるのも迷惑だし。俺は姫君を別の場所へ連行するとしようか」

 呟くと、彼は展示室から退場した。

 うしろから、ぎゃあああっという声なき声が音波となって押し寄せてきた。
 わかる。
 極まると、濁音しか発声できなくなるよね。