「今日の貸切のお客様は、中野様たちだから、和風プレートとチーズケーキですね、多分」
「そうだね」
後悔している過去があり、理想の時間を過ごすために、今日このシマエナガカフェを予約したのは、仲の良い、気品のある五十代の元夫婦のふたり。
柊はプレート用の皿とケーキ皿をキッチン台の上にふたつずつ並べた。
――今日の和風プレートのメインは、カレイの煮付け。普段作らないし、きっかけがないと食べない煮付けだけど、剛さんがまかないとして作ってくれるお陰で、僕も食べることができている。そして、とても美味しい。
少し経つとカランと音がしてドアが開き、中野圭(なかのけい)が先に入りドアを支えると、相楽奈津美(さがらなつみ)も店の中に入ってきた。
いつも貸切を予約した客が入ってくる瞬間、明るい太陽のような爽やかな風の気配と共に、金色に輝く粉がきらきらとカフェ全体に舞う。それはきっと、ハッピーエンドを奏でる舞台の始まりのような時だからだろうか。柊はこの瞬間が好きだった。
「いらっしゃいませ。十時から十二時まで貸切ご予約の中野様ですね」
「はい、そうです」
カウンターで剛が確認をすると、中野が答える。
「当店のシステムはご存知ですね」
「はい。存じ上げております」
「では、ごゆっくりと幸せな時間をお過ごしくださいませ」
確認を終えると、会釈をする中野と奈津美。迷うことなくふたりは店の奥の角に座り、お揃いのような黒いコートを同じタイミングで脱いだ。奈津美のふんわりとした茶色の髪が柔らかく光を反射し、中野のごつごつとした手がテーブルにそっと触れる。
「そうだね」
後悔している過去があり、理想の時間を過ごすために、今日このシマエナガカフェを予約したのは、仲の良い、気品のある五十代の元夫婦のふたり。
柊はプレート用の皿とケーキ皿をキッチン台の上にふたつずつ並べた。
――今日の和風プレートのメインは、カレイの煮付け。普段作らないし、きっかけがないと食べない煮付けだけど、剛さんがまかないとして作ってくれるお陰で、僕も食べることができている。そして、とても美味しい。
少し経つとカランと音がしてドアが開き、中野圭(なかのけい)が先に入りドアを支えると、相楽奈津美(さがらなつみ)も店の中に入ってきた。
いつも貸切を予約した客が入ってくる瞬間、明るい太陽のような爽やかな風の気配と共に、金色に輝く粉がきらきらとカフェ全体に舞う。それはきっと、ハッピーエンドを奏でる舞台の始まりのような時だからだろうか。柊はこの瞬間が好きだった。
「いらっしゃいませ。十時から十二時まで貸切ご予約の中野様ですね」
「はい、そうです」
カウンターで剛が確認をすると、中野が答える。
「当店のシステムはご存知ですね」
「はい。存じ上げております」
「では、ごゆっくりと幸せな時間をお過ごしくださいませ」
確認を終えると、会釈をする中野と奈津美。迷うことなくふたりは店の奥の角に座り、お揃いのような黒いコートを同じタイミングで脱いだ。奈津美のふんわりとした茶色の髪が柔らかく光を反射し、中野のごつごつとした手がテーブルにそっと触れる。



