幸せの道しるべ~理想の時間に逢えるカフェ

 営業時間のお手隙時間、ふと、シマエナガカフェの窓から外を覗く。ここからは、真っ白で静かな雪景色の街並みと青く染まった空が見える。遠くの山々は青い空に溶け込むように美しく、食事をしながら風景も楽しめる場所。そして店内も、ウッド調で統一された内装で、自然な雰囲気が漂っている。木の温もりとコーヒーの甘く苦い香り、流れるオルゴールの癒される曲も、ひとつひとつが訪れる人々の心を穏やかに包んでいた。

――ここは、本当に外とは別の世界のようで、気持ちが落ち着ける場所だ。

 自分の住んでいるアパートの部屋も落ち着くといえば落ち着く。でも部屋はひとりでいられるからであって、現実感は拭えないままの場所。やっぱりカフェだけは何かが違う。

「店員さん、コーヒーふたり分、おかわりお願いできますか?」
「かしこまりました」
 
風景を眺めながら、たそがれていると、カフェを貸し切っている、晴れやかな表情をした二十代のふたり組の女性から注文を受けた。柊はコーヒーを淹れる。