幸せの道しるべ~理想の時間に逢えるカフェ

 じりじりとした暑い日は過ぎていく。木々の枯葉が絨毯に変わる日々も終わり、今年も辺り一面が真っ白に輝く季節がきた。

 今日、カフェには柊と剛以外に優里もいる。優里は客のいない時にコーヒーの作り方を柊から学び、柊と一緒に剛から料理も学んでいた。たまに店の手伝いをするようにもなり、優里は客なのか店員なのかはっきりしない状態で、よくこの店に滞在するようになった。

 優里がキッチンで立っている姿を見ながら、柊はふと、母の若菜がキッチンに立つ姿を思い出していた。

あの頃の温かい料理の香り、笑顔……もしも母が今ここにいたら、どんな風に動いて、どんな言葉を僕にかけてくれるだろうか――。

 ぼんやりと優里を眺めていると、「どうしたの?」と、優里が柊に声を掛ける。

「いや、なんでもない。すっかりシマエナガカフェの店員だなって、思っていただけだよ」
「店員に見える? 嬉しいな!」