幸せの道しるべ~理想の時間に逢えるカフェ

「はぁ、ご馳走様でした。私、こんなに早く食べ終われたの久しぶりかも。美味しかった」
「剛さんのスープカレー、満足してくれたようで、良かった」
「本当にお花見遠足をしていた気分になっちゃった! 噂通り、ここすごいね! 本当に魔法がかかったみたいだった」

 優里は満足そうに目を細めながら天井を見上げ、柊も優里と同じように天井を見上げた。

 天井が青空のように見えていた。

「実はね、柊くんだけだったんだ……」
「何が?」
「……あのね、小学四年生の時の、遠足に行けなかった時にね、柊くんが『一緒に行きたかったね、来年は行こうね!』って言ってくれたの。あの時、はにかむだけで何も返事できなかったけれど、私も一緒に行きたいって、心からそう思ってたんだ。結局は次の年も、私の身体が弱かったせいで行けなかったんだけどね……」

 その言葉の記憶はある。それはあの時、優里ちゃんと一緒に遠足行けたらいいのになと、心からそう思っていたから。

「僕がそう言ったのって、遠足の次の日だよね? 周りが遠足の話を教室でしていた時、優里ちゃんがちらちら話をしている方向を寂しそうに見ていたから……」
「そうそう、その時。柊くんだけが気にかけてくれてたんだよ、私のことを」

――そのお陰で、今の時間があるのかな。

 カフェの中なんだけど、貸切にした時から、春の心地よい風がずっと頬に当たる気がしているし、爽やかな花の香りも微かにしている気がした。貸切予約をした当事者たちは、こんは風に感じられてるんだ。

 これは、幸せで有意義な時間だ――。