幸せの道しるべ~理想の時間に逢えるカフェ

 ふたりは向かい合わせになって座った。メニューを確認してそれぞれが食べたいものや飲みたいものを呟いている。

奈津美さんは月に数回一緒に訪れていた中野さんと一緒にいる時よりも、リラックスしているように感じた。

「人間観察って、本当に面白いよね。少しの変化でどのくらいの親密度かとかが分かるようになると、特に」
「そうですね」

 前は今ほど、誰かの気持ちに興味を持つことはなかったかもしれない。あんまり気持ちに余裕がなかったから――。

最近余裕がある気がするのは、ここ以外でも連絡をくれたりして、色々と剛さんが僕のことを気にかけてくれるからだろう。

「ミックスグリルのプレートにしようかな。いつもあの人、私の健康を気遣って、カロリーとか気にして和風を選ぶのよ」
「そうなんだ……お父さん、すごくお母さんのこと好きだよね?」
「うん。特に最近の動向……すごく私の事が好きだと思う――」

 仲良さげに声を出して笑うふたり。

「和風もおいしそうだね」
「うん、毎回違う料理なんだけどね、全部美味しいの」
「どれにしようかな……朝だからサンドイッチにしようかなと思ったけれど。ミックスのやつエビフライとか唐揚げとかも入ってて美味しそうだから、同じのにしよっと」

 ふたりは一緒にミックスグリルプレートとプリン、そしてコーヒーを注文した。

 和気あいあいと会話が進んでいく親子。柊は、同級生の優里だからなのか、いつもよりも気になり、ひとつひとつの会話に聞き耳を立てていた。聞いていると、優里が柊の息が止まるような言葉を発した。