幸せの道しるべ~理想の時間に逢えるカフェ

「じゃあ、今も?」
「はい、夫婦として一緒にいた時のことは、全く覚えてません。でも、奈津美は恋人がいなく、自分も独り身だったので、何とかもう一度、奈津美と深く関わりたいと思い、次は失敗しないように、奈津美と親しくなっていきました」
「……」
「短くまとめますと、自分が後悔していることは、夫婦だった頃に奈津美から受けた、産後の悩みに寄り添えなかったことで……」
「では、奈津美さんがまだ記憶のある時の、優里さんが生まれた後に戻り、真剣に話を聞き、返事もしたいということですね」
「そんな難しいこと、可能でしょうか?」 
「はい、もちろんです。このカフェでは、訪れる人たちの心の奥底にある、過去に話したかった、伝えたかったなという願いが、特別な力で叶うのです。あの時こうしていれば、こうされたかったと、お互いの心のどこかにあったものがここで交差する時に、理想の時間は生まれますから」
「願い……それは全てですか?」
「いいえ、例外もあります。その力は、純粋な後悔や愛から生まれるものだから、悪意や強制には働きません」