そう指摘されてようやくコーヒーカップを手にとった。
口まで持っていき、止まる。

これを飲んで本当に平気だろうか。
実は雪菜は私がクローゼットを確認したことを知っていて、睡眠薬でも混ぜたかもしれない。

疑念が湧いてくるともうダメだった。
雪菜が作ったものを口にすることはできない。
私は飲んだふりをしてカップをテーブルに戻したのだった。

☆☆☆

外出しない1日はどうしてこんなにも長いんだろう。
私は壁掛け時計を針を睨みつけるようにして見つめる。

秒針はカチッカチッと鈍い動きでじわじわと動き、長針と短針に至っては止まっているようにも見える。

「さっきから怖い顔してどうしたの?」
まだ映画を見たりないのか、雪菜は次になにを見るか考えながら私に聞いてきた。

「え、怖い顔になってる?」
慌てて表情を和らげる。

「なんかぎこちないし。どうしたの?」
雪菜の左手が私の右手を握りしめる。