柚柚は黒板の前に立つ愛乃の後ろ姿をジッと見つめる。
シロがいなくなったことで上の空になっている愛乃が解けるような問題じゃない。

そう思っていたのに……。
白いチョークを手にして愛乃はしっかりと問題文を読みながら、スラスラと解答を書いていく。

それはちゃんと授業を聞いていた柚柚でも正解だとわかる内容だった。
「正解。さすがだな」

数学の先生は愛乃の頭のよさに関心したように何度も頷いている。
なんで……!?

あの汚らわしい犬が自分のせいでいなくなって消沈しているはずなのに、なんで問題が解けるの!?
柚柚は膝の上でギュッと握りこぶしを作ったのだった。