「……なんだよ」
「いや、うちに来て……佐藤から執事としてのスキルを磨いた後、学校に通うことになったでしょ?」
「うん」
「それで最初は赤点だらけだったのに、急にテスト期間だけ真面目に勉強するようになったじゃない?なんでかなぁ、と思って」
気になったんだけど、と口にすれば……"はぁ?"と顔を歪めて私を見る、かなやい。
え?私、変なこと言った?
聞いてはだめだったのかと目を泳がせていれば、今度はとびきり大きなため息が奏矢からもれる。
「な、なによ」
「お嬢、マジで覚えてないわけ?」
「思い出してほしいんだけどー」
思い出してって言われても……。
黙り込み、思い出せと圧をかけてくる奏矢と矢絃。その圧に負けじと、私は過去の記憶をたどっていく。
──確か、執事としての基礎が出来て私を迎えたあの頃だったはず。二人が学校に通い出したのは。
それからしばらくは学校生活と執事としてうまいことやっていた。だけど、一番はじめのテストがどれもこれも赤点のオンパレードで。
おまけに奏矢も矢絃も同じような点数。合計もさほど変わりはなかったのを覚えてる。



