「……はい、慧お嬢様五分です。きっちり起きてください」

「あと五分」
「わかりました。夏休みの追試行ってらっしゃいませ」
「え"!?慧お嬢様追試決定!?ちょっ、勉強いたしましょう!?」


中々に冷たい笑顔を浮かべる秋葉さんに、青ざめ焦る春夏冬さんに揺さぶられ、慧は起きた。
五分だけでそんなに寝ぼけるのかってくらい、ふにゃっとした面持ちだけど。
シャーペンを持たされ、また秋葉さんの指導が始まった。


「……ちょっと奏矢、矢絃っ」


いい加減離してくれないと怪しまれるし、私の汗が──


「なんですか?分からないとこでもあったんですか?」
「教えますよ……なんでも」


離せ、って意味で声をかけたのに二人共何故か椅子を寄せてきてしまった。
手!と口パクで伝えても、スルー。


"このままじゃ私が勉強できないっ!"と小声で伝えれば、


「だろうなっ」
「その顔かわよ」


かなやいも小声で返し、同時に手を離された。


なんなのよ、もうっ──!