自分のケーキを一口食べれば、奏矢は体を起こし私を見下ろす。
もぐもぐと咀嚼しながら見上げた顔は、いたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
意味がわからなく首をかしげれば、より口角があがり、奏矢はそっと私の耳に顔を近付けて言った──



「しちゃったな?お嬢様と執事の関係でありながら──"間接キス"……」


──っ!?


カランっ。

一瞬で理解した言葉の意味に動揺して、皿に上にフォークが落ちた。
そんなこと考えずに食べてしまった自分に今更気付き、奏矢を見ればニヤリ……至近距離で美形が目を細める。してやったり、と言いたげに。


「しちゃったよなぁ、お嬢?」
「な、なっ……」

何かを言い返したい。なのに口が思うように動いてくれないし、言葉も思いつかない。


「しかも……オレと奏矢、二人としちゃったよね、オジョー」
「っ!!」


さらに追い打ちをかけるかのように、もう片方の耳から矢絃がささやいた。


「……あーあ、真っ赤になっちまった。四天王のお嬢様がこんな顔するなんてなぁ」
「可愛いからなんの問題もないよ。オレと奏矢で赤くなるならもっと見たいし」