──今思えば、あの時の二人の反応はとても可愛らしいものだった。
「……そ、そんなことはどうでもいいんだよっ。ほらお嬢、口開けろ」
奏矢は自分の分のケーキを一口、フォークに刺して私へ差し出してくる。
「わたしの分、これでしょ?それは奏矢の──」
と、言いかけたところで、さらに横からもう一つケーキが刺さったフォークが近付いてきた。
「そういうの気にしないでいいから。ほらオジョーあーん」
「いやっ、自分の食べるから大丈、んぐっ」
「あ、矢絃ずりぃ!」
渋る私の口へとケーキをねじ込んだ矢絃。
「どう?おいし?」
──うん、美味しいんだけど……ね。
「お、美味しい」
「……お嬢、俺のも食べろ」
食べて、ではなく"食べろ"。
矢絃もだけど素のままにさせると、私のことを主とは思っていないんじゃないかと感じることがある。
「わ、分かった。……ん」
「よしっ」
目の前の一口サイズを食べれば、奏矢は頬杖をつきながら満足そうに笑う。
今度は矢絃がずるいと、もう一口差し出してくるも、お互いからの一口を食べたんだからって断った。
……自分のもあるのに、執事たちの分も食べたら大変なことになる。
「なぁ、お嬢」
「ん?」



