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──ああっ……どうしよ。自分のことじゃないのに、凄く落ち着かない。


昨日の夜までより厳しく慧の練習に付き合って、一部だけでも奏でられるようにはしたけど……

音楽室へ向かう足が重く、しなくてもいい変な緊張感を覚える。


「慧お嬢様っ本日のバイオリンのテスト、応援しています!」
「おう、ありがとな春夏冬」


この通り、慧には緊張というものはない。
肝が据わりすぎているから。


──何で私の方がプレッシャーみたいなの感じてんだか……あーあ、音楽室見えてきちゃった。


「それではお嬢様、練習の成果をご存分に発揮してきて下さいませ」
「秋葉も春夏冬もきっとびっくりするからな」


頑張ってください!、と秋葉さんたちは席の後ろへと向かう。
音楽室へ先に入った慧の後ろをついていこうとため息を一度ついた。


「……オジョー、頑張ってね。応援してる」
「ヘマすんなよ?」


奏矢と矢絃は小声で私に伝えると、教室の後ろ、秋葉さんたちの隣へと立った。