って思ったのも束の間──


今現在、中々耳が痛い。


夕食後、早速バイオリンのテストに向けて、寮に備わっている防音室にこもって練習をしてるわけだが……


「……けーい、力入れすぎ」


防音室と言っても、かなり省スペース。
座る私の少し前でギコギコ音を奏でる慧。

ずっとこの近さで聞いていると、耳を塞ぎたくなる。


「あー……どうもこう、おしとやかなものは性に合わなくてだな……」


それは承知済みだけど、あるはずののびしろが全く感じられず。
持ち方から見直して、一つひとつやっていってはいるのに……


──私の教え方が悪いってこと?


途中途中、だらける慧にカツを入れながらやってるし、難しいことは大して言っていない。
いまはまだ優しく教えている、と思う。

……まだ。


これは、根気がいるわ。
やるべきポイントをしぼって、徹底的に練習させるしかない。


「今日はこのくらいでいいかな。テストまでは毎日ちょこっとだけでもここで練習ね」

「……ああ、悪いな美青。わたしのせいで練習に付き合わせて」

「嫌だったら最初から引き受けないって。だから──」

「美青ー!あいしてるっ」

「は、はぁ……そいつはありがと。はやくバイオリンしまいなさい」