焦ったせいか、両手で受け取ったティーカップが、重力に逆らわず落ちていった。
割れてしま──
「……っと」
地面スレスレでキャッチしたのは、素手の奏矢だった。
「……っありがとうございます!」
「いやぁ、手袋してるとつい滑ることありますからね。分かります」
涙目になる春夏冬さんに、奏矢は手袋をはめながら笑いかける。
余計に潤んでいくのを見てか、そっと矢絃が春夏冬さんの肩を叩いた。
「とは言え、素手で掴んでしまったので、慧お嬢様には新しいティーカップをお願いいたします。春夏冬さん」
「は、はい!」
「私も手伝いますよ」
泣く寸前までの顔でなんとか耐え、秋葉さんと共に紅茶を注ぐ春夏冬さん。
所々にぬけてる節があるから、秋葉さんだけでは無理なことがあるかもって意味がなんとなく分かった。
「な?」
今の見たろ?と言いたげな視線を向けてくる慧。
「……いいじゃない。四人が仲良くやってくれたら、うちの執事だって今みたいにサポートに入るもの。ね、奏矢?矢絃?」
「はい」



