『ひ……ひつ、じ?』
『スキル……?』


しかし、全然ピンと来ていない様子の兄弟……これは長期戦になりそうな予感。


『ひつじ、ではありません。執事です』
『お、おう……?』

『それと、お嬢様には失礼のない言葉遣いを。……お嬢様から、本日までは気にせずにと申しつかっておりましたが、これから佐藤の目があるところでは許しませんよ』

『……失礼のない言葉づかい、オレ出来るかな』
『出来るか、ではなく出来るようにするのです』


佐藤のなかなか見られない鋭い目を向けられ、二人の口は固く閉じられた。


『……では、わたくしはお二方の指導に入りますので、佐藤の代わりを務める方にお世話をお願いしてありますので、お嬢様にはご不便をおかけしますが、お願い致します』

『平気。佐藤こそ、無理しないでね』

『ありがとうございます』


そのまま、二人を連れた佐藤が部屋を出ると、『待て、執事ってなんだ!?』『不安しかない』と大声で叫ぶ九重兄弟を見送った。


『……大丈夫かな』


アメとムチの使い分けがある意味極端な佐藤。それになかなか強者であろうあの二人。


『時間はかかれど……どうなるのか楽しみね』