──散々雪だるま作りをした矢絃が奏矢と部屋にやって来た。のだけど……手が真っ赤で。持参した桶に手を入れていた矢絃。
奏矢がお茶を注いでくれてる間、すでに温くなったお湯から手をだした矢絃は手を見て、『うげ』と言った。
「もう……しもやけーじゃないのよ?ひどいったらありゃしない。手袋は?」
「右手のやつがどっかいったからしてない」
勝手に手袋自身がどっかいったみたいな……。
あー、なんか私のところに薬あったかな。
佐藤が寮に帰る時に持たせてくれた袋の中を漁れば、流石佐藤。軟膏が入っていた。
「おぉ……佐藤さんさすがすぎるね。なら塗っ……塗るから貸して」
「……うん」
私に塗って、と言いかけた矢絃だったけど、奏矢がいる手前、矢絃は私の手から軟膏を持っていく。
「あ、おっちょこちょいくんにも貸してきていい?オレと同じくらいヤバかったから」
「勿論」
秋葉さんあたり持ってるかもだけど、矢絃が気にかけているなら。
行ってくる、と矢絃が部屋を出た矢先……
「俺も、しもやけ……」
「え?」
お茶を淹れ終えた奏矢が、ボソッと言った。
でも、手袋してたはずじゃ……?
「俺も、しもやけしとけば良かった。そしたら塗ってもらえたのにな」
「……どうして?」
「したら……お嬢から触ってもらえるだろ……」
っそ、そういうこと……。
全く予想していなかったから、奏矢の恥ずかしそうにする姿が胸にハートの矢が刺さった。
「な、なんてな!俺、桶の水捨ててくるわっ」
恥ずかしさを紛らわすように、奏矢も部屋をあとにした。
「え」
……あんな顔するの。奏矢って……。



