「超えられない壁があるって佐藤さんに言ったのは、お嬢様と執事の関係のことだ。……執事は、どうしたって同等にはなれない。だから、お嬢のことを……」
言いかけたところで、奏矢は覆っていた顔をあらわにする。そして、なおも変わらない表情で私を見つめた。
「俺は執事なんだって、だからダメなんだって言い聞かせて表に出さないようセーフティかけてたのに……一度考え出したら、お嬢のことを……好きな気持ち、どうすりゃいいのかわっかんなくてよ……」
好き──
奏矢が並べた言葉の中で、私はこの一つしか頭に入ってこなかった。
都合のいい頭なんだと思う。
それでも、目の前に好きな人がいて、好きな人から好きと言われたら、そうなるのはおかしいことじゃない……はず。
嬉しいって、思わないわけない。
だってこんなに、胸が高鳴ってるんだもの。
「……奏矢」
泣きそうに揺らぐ瞳と視線を合わし、私は前のめりになって笑ってみせた。
「ありがとう。すごく……すごく、嬉しい」
悩みはなんだと聞き出せたことも、好きだって言ってもらえたことも。
「嬉しいって、お嬢……一応言っておくけど、俺は、告白してんだぞ?単にお嬢を好きって言ったんじゃなくて、女として好きって言っ──」
「……分かってる。分かってて、嬉しいって言ったのよ?」
「は……?」
揺らいでいた瞳が、今は丸く見開かれている。
そんな奏矢とは逆に私の視界が潤んできた。
このまま前のめりになっていては溢れるかもしれないと体を起こすも、
「っ!?」
思いきり引き寄せられ奏矢の上に乗っかってしまった。
「ちょっと奏──」



