どこかバツが悪そうな、そんな表情をする奏矢はそらしていた視線を私へと向ける。
「……長くなる、けどちゃんと聞け」
「勿論」
頷きながら添えていた手を引っ込めようとすると、その手を掴まれてしまった。
驚いて強張りかけるもそのまま、ゆるく握られながら話を聞くことに。
「交流会のあの野郎との一件から……色々と考えてたんだ。最初は縁談とかふざけんなくらいに思ってたのが、結婚とか聞かされて……お嬢が俺のそばからいつかいなくなんのか、とかさ」
「うん……」
「あの日、お嬢に拾われて以来、ずっとずっとそばにいたのに、よく知りもしない男に貰われる時が来んのか、とか。頭ん中、そんなことばっかになっててよ……」
話しながら、奏矢は私の手を握る力を強めた。
「仮に誰かが現れたとして、なんでお嬢をやらなきゃいけねぇんのか、んなの無理だって考えてたら……俺が抱いたらダメな考えが浮かんじまった」
「ダメな考え?」
「……俺が、ずっとお嬢のそばにいればいいって。そう、思ったのがトリガーになったんだろうな。……執事のくせしてっ、どんどんわいてくる気持ちをおさえんのが辛くなったんだ」
だから佐藤さんに相談してたんだ、と顔を片手で覆う奏矢。
隙間からうっすらと覗かせる表情は、苦しそうで……なのに、
奏矢の言葉の取り方を私が間違っていなければ──もしや、なんて淡い期待を抱いてしまっている。



