「オジョー、奏矢のことばっか考えてるのバレバレ。だけど奏矢はなーんも言わないし駄々こねるし?オレがそばにいればオレのことしか考えなくなるかなーって思ったまで」
マイペースな口調ではなく、どこか好戦的な視線と口調が、主に奏矢へと向けられる。
奏矢が何かを言いかけてはやめ、視線をそらす中、矢絃は私を引き寄せた。
「つかもうオレ、オジョーとキスしたし」
ね、と私の髪に口付ける矢絃。
──っ!?
「矢絃お前、なに言ってんだ……?俺らはお嬢の執事だろ……?」
幻でも見るかのような奏矢の目。
驚き固まる私のそばで矢絃は淡々と続ける。
「なにって、事実。オレは執事とか関係ないと思ってる。もし疑うならオジョーに聞けば?それにオジョーならオレの感覚、覚えてくれてるだろうし」
感覚、とはキスのことを意味しているのだろう。
なんて、頭の中が驚いてるのに変に冷静。
だけど、言葉が出てこなくて何も言えなかった。
そして、
唖然とする奏矢を押して、矢絃は扉を閉めた──



