私のことを見てさほど顔には出ないけど驚く矢絃に、顔をそらす奏矢。
声をかけてなお、閉めたい側と閉めさせない側の攻防をやめない二人の間に入れば、どちらとも力をゆるめ、扉から手を離す。
「別にじゃないでしょ?喧嘩?」
「喧嘩じゃねぇよ。矢絃が……オジョーに心配かけんなって言ってただけで。この通りもう少しで治る。顔見たなら部屋戻れ」
私──
最近何度言われたかしら。
"来んな"
"戻れ"って。
もともとの口の悪さもほどよくドライなところも十分に知っている。
だから少し前の私なら、はいはいと聞いて流せていた。
だけど……
奏矢のことが好きだって分かってる今は、簡単に流せなくなってる気がする。
言われるたびに、ずしん。と胸が重くなってくる感じがして……。その重さはどこにも消えずため込まれていく一方で──
苦しくなる。
「ねぇ奏矢……オレ、オジョーのこともらっていい?」
「……は?」
「……え?」
突然すぎる矢絃の言葉に、俯きかけていた顔をあげ、矢絃を見る。奏矢と私の声が重なれば、矢絃は深いため息をついて髪を軽くよける。
「や、矢絃?なんでそんなこと……」
ごめんなさい、って矢絃には伝えたのに?



