矢絃は、私が奏矢を気にかけていたことを察して……。
だけど何も言わず、聞かずに見守ってくれていた。奏矢のことも、私のことも。
「別にオレを困らせたりすんのはいいけど、オジョーまで困らせんのはやめろよ。今決めろ。病院か薬か」
まるで奏矢が乗り移ったみたいに、矢絃の口調はいつもより強い。……こんな矢絃、見たことない。
矢絃から目をそらす奏矢は、固く結んでいた口をようやく開いた。
「……びょう、いん」
ほんとに小さな声だった。
けれど、奏矢が病院と言ってくれたことに安堵し胸を撫でる。
「遅すぎ。ったく……オジョー、荷物オレたちの部屋にバッグ二つあるからよろ。オレは奏矢運ぶ」
「分かった。行ってくるね」
部屋を出る時、ちょっぴり乱暴に奏矢をおぶっていたのが見えた。
いつもなら、矢絃がおぶってもらう側なのに。
睨むように今決めろって言っていた矢絃だけど、ちゃんと答えれば優しい顔つきに戻る。
なんだかんだ兄弟って仲良しだ……。



