──部屋に戻ると、当然着替えは終わっていた。
だけどそばに置きっぱなしの水と薬には手つかずのまま、ベッドには奏矢がいて。
はぁ、と私たちは息を吐き、奏矢のそばに置いてある椅子へと腰かけた。
「奏矢さぁ、なんでそんな頑なに行きたがらないのか知らないけど、行かないなら行かないなりに薬飲んで治そうとしなよ。行くか飲むか、せめてどっちかっしょ。どっち」
言われなくても、そんなことは分かりきっているのだろうけど……。奏矢がどちらも嫌がるから、矢絃は半ば強制的に選択させようとしている。
「……るせぇな。寝てりゃ治る。それより、お嬢とお前は家に戻れよ。佐藤さんから連絡来てんぞ」
私たちを見ようとせず、背中を向ける奏矢。
本来なら、今日戻ってクリスマスや、年末年始に向けての掃除や準備をするはずだった。
だから、その予定を崩さないために戻れと言うんだろう。
「そんなこと……寮に、ましてや熱があるのに奏矢だけ置いていけるわけないでしょ?」
布団の上からトントンと優しく叩けば、
『いいから戻れ』より布団に潜る奏矢はそう言った。
何しても、何を言っても跳ね返されてしまう。
言われた通り私たちだけ家へと帰っても、奏矢は一人で治すかもしれない。
けれど悪化していたら気付けなくなる。だから、帰るわけには行かない。



