「……準備して」
「嫌だ」
「奏矢」
「行かねぇ」
病院を拒否しながら、着替えるから一回外に出ろ、とまで言われてしまい、体温計を持っていた手が力なく垂れる。
「……オジョー、いいよ。出よ。オレらもご飯食べてからにしようよ」
矢絃は私の手から体温計を取って枕元に置き、私の背中を押しながら部屋を出た。
矢絃に押されるままに食堂に来て、矢絃がさっと料理してくれたものをつまむ。
けれど……好きとか、心配とか、病院に行ってくれないこととか、様々な気持ちが混ざり合って食欲なんか出やしなくて。手が止まってしまう。
「オジョー」
「あ、ごめん。食べる」
「無理しなくていいけど、奏矢のやつ放っておけば治るんじゃない?高熱続きで心配なのは分かるけどさ」
「でも──」
話の最中、矢絃と私のスマホが同時に音を立て、奏矢かと思い確認すると……佐藤からだった。
"何時に到着致しますか?"と。
思わず深いため息がでてしまった。
奏矢のことで、佐藤に帰る時間や帰省が遅くなる理由を伝えていなかったから。
食事の用意とかしているだろうに……申し訳ないことをしてしまった。
「あー……ごめん。オレが連絡しとくべきだったやつだよね」
「いいの。私も伝えてって言わなかったから。……失念していたわ」
二人で佐藤へ似かよった返事をして、着替えはすでに終わってるだろうと再度部屋に行くことに。



